こんにちは!
全国の医学部受験生をサポートするオンライン塾の宮崎大学医学部医学科の竹内壮吾です!
私は現役時代、そしてそこからの受験生活において、多くの挫折や葛藤を経験しながら、宮崎大学医学部医学科への合格を掴み取りました。現在は、憧れだった医学の世界で毎日を本当に新鮮で刺激的に、とても楽しく過ごしています。今回は、受験勉強のやり方に一人で悩み、自分の才能に限界を感じて立ち止まりそうになっている皆さんのために、私の個人的な経験を包み隠さずにお話ししたいと思い、筆を執りました。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
今日は、大きく分けて2つの非常に大切なテーマについて書いていきたいと思います。
前半は、私が綺麗事なしに医師を志した本当の理由や、どのような葛藤を経て医学部への挑戦を決めたのかという、私の原点となるストーリーについてです。
そして後半は、皆さんが日々の自習室で最も頭を悩ませているであろう、数学や理科の勉強における永遠のテーマについてです。 「自分は解法を丸暗記するタイプなのか、それとも高い思考力や地頭で勝負するタイプ、もしくはそのどちらでもないのか」 という疑問に対して、私の泥臭い失敗談を交えながら、明日からの勉強が劇的に楽になる新しい視点をお伝えしていきたいと考えています。
一般的に、医学部を目指す動機といえば、「幼い頃から人の命を救うことに強い正義感を抱いていました」とか、「家族が病気になったことをきっかけに、絶対に医者になると心に誓いました」といった、とても立派で清廉潔白なものばかりが求められがちです。 また、日々の理系科目の勉強法に関しても、「医学部に受かるような人は、最初から地頭が良くて、どんな難しい応用問題でも瞬時に解法をひらめくセンスに恵まれているのだから、凡人が同じように努力しても追いつけない」といった、諦めを誘うようなアドバイスが一般的です。
しかし、私はそれらの一般的な考え方や綺麗事に対して、自分自身の泥臭い受験経験、そして実際に医学部に入ってからの学びを振り返ってみると、少しだけ疑問と新しい視点を持っています。
本当に、最初から高尚な志を持っていなければ、医学部を目指してはいけないのでしょうか。そして、数学や物理、化学といった科目は、一部のセンスに恵まれた地頭の良い天才だけが解けるような、私たち凡人には手の届かない学問なのでしょうか。
今、果てしなく高い医学部の壁を前にして、毎日自分の不甲斐なさにため息をついている受験生の皆さん。 さらに、周囲の優秀なライバルたちと自分を比べて、「自分には理系のセンスがないのではないか」と、先の見えない未来への恐怖に不安を抱きながら、孤独な日々を過ごしている浪人生や社会人受験生の皆さん。
よし、今日も1日頑張るぞと意気込んで問題集を開いたのに、解説を読んでも「なぜこの公式を使うのか」が全く理解できず、自分の頭の悪さに急に焦ってしまい、ペンを握る手が止まってしまうことはありませんか。
また、模試の判定や周囲の優秀すぎる人たちの姿を見て、「自分はこんな基礎的な問題ばかりやっていて本当に間に合うのだろうか」と、一人で孤独な悩みを抱えていませんか。
そんな風に思い悩んでしまうこと、ありますよね。そのお気持ち、私には本当に痛いほどよく分かります。私も受験生時代は、周りの優秀な人たちと自分を比べては自信を失い、理科の難しい問題が解けずに「自分には才能がないのではないか」と、見えない未来に怯えながら一人で葛藤していたごく普通の学生だったからです。
しかし、私が悩み抜いた末に宮崎大学医学科に合格し、実際に過ごしてきた日々を振り返ってみると、志望動機なんて最初は不純で小さくても十分に前に進むエネルギーになります。そして、数学や理科という科目も、正しい手順を踏んでアプローチを変えてあげれば、センス不要で誰でも確実に得意科目に変えることができるという真実が見えてきます。
今日は、皆さんが心の中に抱えている、医学部への漠然とした憧れと現実とのギャップや、理系科目に対する苦手意識という深い悩みに優しく寄り添いながら、読んだ後に心がスッと軽くなり、明日からの勉強が少しでも前向きになるようなヒントを、私のリアルな体験を交えて丁寧にお話しさせていただきます。
第二章 私が医師を志した綺麗事なしの本当の理由

1 高校時代にお金が稼ぎたいという本音と経済学部との間で迷った葛藤です
まずは、私が医学部を目指すことになった、本当に泥臭くてリアルな動機についてお話しさせてください。 私はそもそも、最初から「お医者さんになって世界中を飛び回り、難病の患者さんをたくさん救うんだ」というような、崇高な志を抱いていた優等生ではありませんでした。
実は、高校3年生のギリギリの時点まで、私は「経済学部に行くか、それとも医学部に行くか」という、全く方向性の異なる2つの進路の間で本気で迷い、悩み続けていたのです。
なぜそれほど迷っていたのか、綺麗事なしでお話しします。 その当時の私の胸の内にあった最大のエネルギーは、 「将来、社会に出てから、とにかくたくさんお金を稼ぎたいな」 という、非常に不純で、俗世的な欲望だったからなのです。
お恥ずかしい話かもしれませんが、当時の私は、お金があれば人生において自分の選択肢が無限に広がると思っていましたし、自分の力で経済的な自由を手に入れることが、何よりのかっこいい生き方のように感じていました。 そこで、経済学部に行ってビジネスや投資を学び、会社経営者として成功して稼ぐか、あるいは医学部に進んで医師としての専門技術を身につけて、高い給与を得て稼ぐかという、2つの「稼ぐためのルート」を本気で天秤にかけていたのです。
このようなお金に執着するような動機を他人に話すと、 「医師というのは命を扱う崇高な仕事なのだから、そんな不純な気持ちで目指してはいけない」 と、学校の先生や周りの大人たちからお叱りを受けるかもしれません。 しかし、私はこの本音を否定する必要は全くないと考えています。
受験という、長くて過酷な戦いを最後まで走り抜くためには、自分の中に「どうしてもこれを手に入れたい」という、強烈で生々しいエネルギー(原動力)が絶対に必要になります。 それが綺麗事の志であっても、あるいはお金という生々しい欲望であっても、あなたが机に向かうためのガソリンになるのであれば、その火の強さに優劣など存在しないのですよ。
2 深夜の救急外来での原体験と、体だけでなく心まで救ってくれた優しさです
とはいえ、お金を稼ぎたいという気持ちだけで医学部への険しい道を歩み続けることは、やはり少し難しい部分もありました。そんな私の背中を、本格的に医学への挑戦へと押し流してくれた、ある一生忘れられない重要な出来事がありました。
それは、私が高校生の時に、少し大きな怪我をしてしまった時のことです。 その日は運悪く、深夜の時間帯だったため、近くの個人の病院はどこも閉まっていました。私は痛む体を引きずりながら、地域で深夜も受け入れを行っている、大きな総合病院の救急外来へと運ばれることになりました。
夜の救急病院の待合室というのは、独特の無機質な匂いが漂っており、どこか冷たくて、恐ろしいほどの孤独感に包まれています。 「自分の体は、一体どうなってしまうのだろう」 「この痛みがこのまま治らなかったらどうしよう」 という恐怖で、私の心は体以上に、ボロボロに傷つき、弱り切っていました。
そんな暗闇のような不安の中にいた私の元に、1人のお医者さんが現れました。 その方は、深夜の過酷な勤務で非常に疲れているはずなのに、私の痛む部分を丁寧に診察しながら、 「大丈夫だよ、この怪我なら綺麗に治るから心配しなくていいよ」 と、本当に温かい笑顔で、優しく声をかけてくれたのです。
その一言を聞いた瞬間、私の心の中に渦巻いていた冷たい不安の雲が、一瞬で綺麗に消え去っていくのを感じました。 お医者さんがかけてくれた優しい言葉が、私の痛む体だけでなく、弱り切っていた「心」を、心の底から救い、温かく落ち着かせてくれたのです。
この時に、私は生まれて初めて、医師という存在の本当のすごさに気づくことができました。 「ただ病気を治す、怪我を治すという技術的なことだけでなく、目の前で怯えている人間の心まで丸ごと救ってあげられる、なんて素晴らしい職業なんだろう」 と、純粋な感動が胸に込み上げてきました。 お金を稼ぎたいという最初の動機に、この「深夜の優しさに救われた原体験」がピタッと重なったことで、私の医学部受験への想いは、生々しい欲望から、人生を賭けるに値する確固たる志へと変化していきました。
3 会社員生活への漠然とした閉塞感と、毎日違う人と出会う医師の仕事への憧れです
医学部進学を決意したのには、会社員として働くことに対する、私なりの漠然としたイメージや葛藤も関係していました。
もし私が経済学部へ進学していたら、おそらく多くの先輩たちと同じように、大学を卒業した後は一般的な会社員として、どこかの企業に就職して働いていたと思います。 もちろん、会社員として社会を支える仕事も本当に素晴らしいものですし、そこでの自己実現の形はたくさんあります。
しかし、私の勝手なイメージかもしれませんが、会社員としての生活を想像した時に、どうしても心に引っかかるポイントがありました。 それは、 「毎日、同じオフィスの同じ部署で、ほとんど固定されたメンバーとだけ顔を合わせて仕事を続けることになるのではないか」 という、ある種の閉塞感(退屈さ)に対する恐怖でした。
私は、自分の人生において、常に新しい刺激を受け続けたい、色々な世界に触れていたいという強い想いを持っていました。 ですから、毎日が決まりきったルーティンの中で、同じ人とだけ関わって終わっていく生活は、私にとって少しだけ寂しいものに感じられたのです。
一方で、お医者さんという仕事はどうでしょうか。
病院の診察室には、毎日、本当に多様なバックグラウンドを持った、年齢も性別も職業も全く異なる患者さんたちが、それぞれの悩みを抱えて通ってこられます。 医師として彼らと向き合うことは、単に病気を診断するだけではありません。 彼らがどのような人生を送り、どのような想いで生活しているのかという、彼ら自身の「人生観」や「生き様」に触れることでもあるのです。
「毎日、違う患者さんと出会い、新しい対話が生まれる仕事であれば、何十年続けても決して飽きることがないのではないか」 「毎日が新鮮な刺激と学びに満ち溢れていて、とてもエキサイティングで楽しい毎日に違いない」 そんな風に考えると、私の胸は医師という職業に対して、本当にワクワクとする期待感でいっぱいになりました。この「仕事に飽きがこなくて、毎日が楽しそうである」という素直な好奇心が、私の挑戦を支える確かな柱になりました。
4 実験が苦手だった理系の葛藤と、人体という第2の宇宙への知的好奇心です
さらに、私の学問的な特性も、医学部への進学を大きく決定づける要因になりました。
私は元々、高校生の時は理系クラスに在籍していました。理系ですから、周りの友達と同じように、将来は工学部や理学部といった、ものづくりや自然科学を研究する進路に進むのが普通の流れでした。 しかし、私には理系として致命的な弱点がありました。
私は、パソコンをカタカタと1日中操作したり、理科の実験室で細かいビーカーの目盛りを睨みつけながらコツコツと実験を進めたりすることが、本当に大の苦手だったのです。 「工学部に行って、ずっと機械の設計をしたり実験を繰り返したりする生活は、自分には到底耐えられないかもしれない」 と、自分の適性のなさに頭を抱えていました。
そんな理系の葛藤を抱えていた私にとって、唯一、心から「面白いな」と興味を惹かれた対象が、他でもない「人間の体(人体)」に関する学問でした。
皆さんは、私たちが毎日当たり前のように使っているこの「身体」が、どれほど不思議に満ち溢れているか、深く考えたことはありますか。 例えば、風邪をひいた時に何気なく口に放り込んでいる小さな錠剤(お薬)が、なぜ体の中で正しく作用して、熱を下げたり痛みを消したりしてくれるのでしょうか。 その化学的な仕組みや、薬が細胞にどのようにアプローチしているのかというプロセスを想像するだけで、私の知的好奇心は強烈に刺激されました。
よく、人体は「第二の宇宙」と呼ばれています。 現代の最新の医学をもってしても、人間の脳の仕組みや、病気の発生プロセスの多くは、未だに謎に包まれています。 「自分にとって一番身近にある自分の体の中に、この世界で一番深くて、誰も解き明かせない不思議が眠っている」 この道の世界に対する純粋な探求心とロマンが、私の知的な興奮を揺さぶりました。工学部での実験は退屈そうだけれど、医学という果てしない宇宙の謎に迫る学びであれば、一生を捧げて勉強し続けることができると確信したのです。
5 高校時代のYouTuberとの出会いがくれた、医学部のリアルな世界観です
そして、私の知的好奇心に決定的な道標を示してくれたのが、高校生の時に出会った、ある医学部YouTuberの方の存在でした。 当時、「リリ先生」という方が、医学部の勉強法や、医学部での実際の学生生活について動画で分かりやすく発信されていました。
それまでの私の医学部のイメージといえば、 「朝から晩まで分厚い専門書を暗記し続けるだけの、無味乾燥で辛い監獄のような場所」 というものでした。 しかし、リリ先生が楽しそうに語る医学部の世界は、全く異なっていました。
解剖実習の奥深さや、病気の仕組みをパズルのように解き明かしていく授業の面白さ、そして同じ志を持った熱い仲間たちと切磋琢磨して成長していく毎日の充実ぶり。 リリ先生の動画を通して、医学部での学びのリアルな楽しさや魅力を画面越しに浴びることで、私の心の中の「いつか自分も、この素晴らしい学びの世界に足を踏み入れてみたい」という憧れは、抑えきれないものになっていきました。
また、受験生という大変な時期にあえて「医学部合格」という、最高峰の高い目標を設定して自分を追い込み、 「自分の限界を突破して、合格した時の圧倒的な達成感を味わってみたい」 という、チャレンジャーとしての熱い気持ちも、私の胸を焦がしていました。 こうして、お金、深夜の優しさ、飽きない仕事、人体の神秘、そしてリリ先生への憧れという、色々な想いが複雑に絡み合い、私は退路を断って宮崎大学医学部医学科を目指して猛勉強をスタートさせることになったのです。
第三章 地頭の挫折と、高校数学での定期テスト30点・40点のショック

1 中学時代に「自分は少し頭が良いのかも」と自惚れていた傲慢の鼻がへし折られました
ここからは、後半のテーマである、皆さんが日々の勉強、特に数学や理科を解く中で、誰もが一度は突き当たる「自分の才能の限界」というリアルな葛藤についてお話ししていきます。
正直にお話ししますと、私は中学生の頃までは、 「あれ、自分って実は少し地頭が良いタイプなのかな」 と、周囲の友達と自分を比べて、心の中で密かに自惚れて(うぬぼれて)いました。 中学校のテストでは、そこまで死に物狂いで勉強しなくても、ある程度は良い点数が取れていましたし、周りから「勉強ができてすごいね」と褒められることも多かったからです。
しかし、この愚かで浅はかな傲慢の鼻は、高校に入学した瞬間に、木っ端微塵にへし折られることになりました。
高校の授業が始まった瞬間から、勉強の難易度と進むスピードは、中学時代とは比較にならないほど跳ね上がりました。 特に、数学の授業においては、先生が黒板に書き殴る数式の意味が、日に日に理解できなくなっていったのです。 「え、なんでこの1行目の式から、突然2行目の式に変形できるの?」 「この公式は、一体何のために存在しているの?」 と、授業中に頭の中がハテナマークでいっぱいになり、冷や汗が流れる毎日が始まりました。
2 定期テストで30点や40点を連発し、自習室で周りの優秀さに置いていかれる焦りです
私の焦りは、高校最初の定期テストの結果として、本当に残酷な形で現れました。 中学時代の得意科目だったはずの数学のテストで、私は「30点台」や「40点台」という、赤点ギリギリの壊滅的な点数を連発してしまったのです。
私の出身高校は、決して全国から天才たちが集まるような超有名進学校というわけではありませんでした。ごく一般的な、地方の普通の高校だったのです。 それなのに、その普通の高校の数学の授業ですら、私は完全に置いていかれてしまいました。
放課後、学校の自習室に行くと、周りの友達が静かに、黙々とペンを走らせています。 ふと彼らの机の上を覗き見ると、私には暗号にしか見えないような難しい問題集を、当たり前のような顔をしてスラスラと解き進めているのです。 その光景を見るたびに、私の胸は押し潰されるような焦りと劣等感でいっぱいになりました。
「自分はこんな教科書レベルの基本問題すら分からないのに、周りはあんなに先を走っている」 「自分には、理系としての才能や、数学のセンスが根本的に欠けているのではないか」 自習室の硬い椅子の匂いの中で、周りのシャープペンの音だけが響く空間で、私は一人、ノートを見つめたままペンを握る手が震え、静かな絶望を感じていました。この「どれだけ努力しても追いつけないかもしれない」という孤独な焦りは、受験生時代の私の心を、本当に長い間、暗く支配し続けていたのです。
第四章 「理科はセンス」という最大の嘘と、発想力を生み出す経験の科学
1 難しい発想をするということは、事前にその解法に出会ったことがある経験があるからです
高校数学や理科の難しい問題に遭遇したとき、多くの受験生が、 「この問題を解くためには、自分にはない天才的なひらめきや、柔らかい発想力が必要なのだ」 と諦めてしまいます。 学校の先生や、ネットの優秀な合格体験記が語る「数学は発想力が命である」というフレーズを信じて、 「自分は地頭が悪いから、どれだけ勉強しても医学部レベルの問題は解けない」 と勝手に限界を決めて、心を閉ざしてしまっていませんか。
しかし、私は自分自身の泥臭い経験から、この「理系科目はセンスやひらめきが必要である」という常識に対して、自信を持って「それは大きな間違いです」と言い切りたいと思います。
結論からお伝えしますと、入試において私たちが「あの人は発想力があって頭が良いな」と感じるあのひらめきの正体は、実はひらめきでもなんでもありません。 それは、 「事前に、それと非常によく似た解法やアプローチに出会ったことがあるという、過去の『経験』の蓄積」 に過ぎないのですよ。
人間は、全くゼロの状態から、魔法のように新しい解き方をその場で思いつくことなど、基本的にはできません。 高度な論述問題や、複雑な状況設定の問題をスラスラ解いている天才たちも、実は、自分の頭の中にある膨大な「過去に解いたことのある問題のデータベース(引き出し)」を、高速でスキャンしているだけなのです。 「あ、この問題の設定は、昔解いたあの問題のこの部分と構造が全く同じだな」 「こういう時は、あの解法パターンを応用すればうまくいく経験があるぞ」 というように、過去の出会い(経験)を組み合わせて、目の前の問題に対応しているに過ぎません。
つまり、難しい問題が解けるようになるために必要なのは、生まれ持った柔らかい脳みそではなく、これからどれだけ多くの「解法パターン」に出会い、それを自分の脳内にストックしていけるかという、極めて泥臭くて、誰にでもできる努力の絶対量なのです。 「地頭が悪いから」と自分の可能性を諦めるのは、今日を限りに、もう終わりにしましょう。
2 解法を暗記してストックし、そこから最適なルートを探し出すのが発想力の本質なのです
では、具体的に「解法を脳に蓄積して解けるようになる」とは、どのような脳内のプロセスなのでしょうか。 分かりやすく説明するために、少しイメージしてみてください。
皆さんの頭の中には、これから勉強を進めるにつれて、たくさんの解法パターンが詰め込まれた「本棚」が作られていきます。 数学や理科の試験問題というのは、その本棚から、目の前の問題を解くために「最も適した1冊(解法)」を正確に探し出す、一種の宝探しゲームのようなものです。
ここで重要になる力が、2つあります。
1つ目は、本棚の中に、できるだけ多くの本(解法パターン)を整理して並べておく「解法暗記の力」です。 そもそも本棚の中身が空っぽであれば、どんなに探したところで、問題を解くためのアプローチが見つかるはずはありません。ですから、標準的な問題集を繰り返し解いて、基本のパターンを頭にインプットすることが、すべての土台になります。
2つ目は、難しい問題に出会った時に、 「自分の持っているあの本(解法)と、この本(解法)を組み合わせたら解けるのではないか」 と、本棚から正しいアプローチを探し出して試していく「アプローチを探す力」です。
この、自分の蓄積したデータベースの中から、最も適した回答のルートを見つけ出す作業こそが、世間で「発想力」や「ひらめき」と呼ばれているものの本質なのです。 ですから、まずは徹底的な解法暗記によって、本棚を本でいっぱいにすること。 そして、応用問題を解きながら、その本を取り出す練習を繰り返すこと。 この2つのステップを正しく踏んであげれば、どんなに不器用な人であっても、数学や理科の問題をパズルのように楽しく、スラスラと攻略できるようになります。
3 物理と化学は数学よりも圧倒的に公式の数が少なく、覚えることも限定的です
「とはいえ、数学の解法をすべて覚えるだけでも気が遠くなるのに、その上に物理や化学の膨大な解法まで暗記するなんて、自分には到底無理です」 と、理科の暗記量に早くも絶望しかけている人がいるかもしれません。
でも、どうぞ安心してください。 理系科目のツートップである物理と化学は、実は数学に比べて、 「覚えるべき公式の数が、圧倒的に少なくて済む、非常にコストパフォーマンスの良い科目」 なのですよ。
数学には、数IA、IIB、IIIまで含めると、本当に無限とも思えるほどの数式や、性質、定理が存在します。 出題のパターンも星の数ほどあり、そのすべてを網羅するのは確かに大変な作業です。
しかし、物理はどうでしょうか。 物理で使われる基本的な公式の数というのは、実は最初からすべて決まっており、片手で数えられるほど限定的なのです。 東大や京大、あるいは単科医科大学が出題してくるような、一見すると頭がクラクラするような難しい難問であっても、実はそれらを丁寧に分解(紐解いて)してあげると、 「なぜ、この公式が成り立っているのか」 という、一番最初の、本当に根本的な基本公式の成り立ちを聞いているだけの問題が非常に多いのです。
化学に関しても、反応のルールや物質の性質、計算で使う基本的な反応式は、数学のパターン数に比べれば驚くほどコンパクトに整理されています。 つまり、理科(物理・化学)は、覚えるべき武器(公式)の数が非常に少ない代わりに、 「その公式が、なぜ、どのような物理現象に基づいて出来上がっているのか」 という根本的な理解を、深く暗記(記憶)できているかどうかが、すべての合否を分けるポイントになります。
理科は、数学のような高い発想力はほとんど必要ありません。 公式の根本的な理由を深く理解した上で、いくつかの決まった解法パターン(=経験)を脳にストックして、それをうまく利用する練習を積めば、誰でも確実に医学部レベルで高得点を稼ぎ出す「最大の武器」に進化させることができます。理科に対する不必要な苦手意識は、今すぐゴミ箱に捨ててしまいましょう。
第五章 竹内流・手を動かさない物理&数学の超高速アプローチ習得術

1 電車の中で参考書を読み、ひたすら「解法を目で追う」超効率暗記法です
それでは、私が実際に受験生時代に実践していた、時間を1秒も無駄にせずに解法パターンを爆発的に脳にストックするための「超効率勉強法」についてご紹介します。
多くの受験生は、 「勉強というのは、机に向かってノートを開き、シャープペンを持って、計算用紙にガリガリと手を動かして計算を繰り返すことである」 と思い込んでいます。 もちろん、その泥臭い作業も大切ではありますが、その方法だけですべての問題を解こうとすると、 「1日に解ける問題数が非常に少なくなり、全範囲を網羅するまでに膨大な時間がかかってしまう」 という、時間的な大きな壁にぶつかってしまいます。
そこで、私は移動時間や隙間時間、さらには机に向かう気力が起きないような時間帯をフル活用するために、「参考書を、紙に書かずに、ただ目で読む勉強法」を実践していました。
特に、物理の勉強において、この「読む勉強法」は凄まじい威力を発揮しました。
私は通学中の電車の中や、塾への移動時間に、物理の参考書をカバンからサッと取り出し、ノートもペンも持たずに、ただ小説を読むようにページをめくっていました。 具体的には、以下のようなステップで進めていました。
- 問題文を読み、どのような状況が設定されているのかを頭の中でイメージする。
- 「この状況であれば、あの公式とあの公式を使って、こういう流れで式を立てていけば解けるはずだな」と、アプローチの道筋を頭の中で組み立てる。
- すぐに解説のページを開き、自分の組み立てたアプローチが、解説の解法プロセスと一致しているかどうかを答え合わせする。
- 一致していれば次の問題へ進み、間違えていたり、思いつかなかったりした場合は、解説の式の意味を「なぜそうなるのか」という根本の理由に立ち戻って深く納得し、頭に焼き付ける。
この、紙に書かずにアプローチだけを確認する勉強法であれば、ペンを持って実際に計算する時間の「10分の1以下の時間」で、1つの問題を処理することができます。 重たい計算をするのは自習室だけで十分です。それ以外の時間は、このように「解法の引き出しを増やす作業」に徹底的に特化することで、物理の全解法パターンを、圧倒的なスピードで脳内データベースにストックすることが可能になりました。
2 数学は毎日100問パッと見て、解法のプロセスを頭に思い浮かべる訓練です
この「読む勉強法」は、問題の種類の多さに誰もが苦しむ「数学」の攻略においても、驚異的な効果を発揮しました。
私は受験生時代、机に向かってガリガリ勉強する時間とは別に、毎日必ず、 「数学の問題を、1日に100問くらい、パッ、パッと目で見て、解法のアプローチを考えるトレーニング」 を、自分自身のルーティンとして課していました。
分厚い網羅系の参考書や、これまでに解いたことのある問題集を用意し、ページをめくって問題を見つめます。 そして、 「よし、この問題は、まずここの条件に注目して、こういう変形をしてから、あの公式を当てはめれば解けるな」 と、解くための全体的なプロセスだけを、頭の中でスピーディーに思い描くのです。
思い描くことができたら、すぐに解答を確認します。 もし、自分の思い描いたプロセスが正しければ、その問題は「いつでも解ける状態にある」と判断し、実際に計算用紙に解くことはせずに、次の問題へと進みます。 逆に、解答を見て「うわ、そんなアプローチは思いつかなかったな」となった場合は、その解法パターンを自分の本棚の新しいコレクションとして追加し、深く記憶に刻み込みます。
この「数学毎日100問トレーニング」を積み重ねることで、私は数学のあらゆる出題パターンに対する「最初の1歩の踏み出し方」を、完全に脳に染み込ませることができました。 受験生、特に時間のない現役生や、仕事と両立しながら勉強時間を捻出している社会人受験生にとって、すべての問題を1からノートに書いて解く時間は、物理的に存在しません。 だからこそ、この「アプローチの暗記」に特化した超高速の訓練を取り入れて、脳内の解法の引き出しを、周りのライバルたちの何倍ものスピードで満たしていってほしいと思います。
第六章 別解が未来の可能性を広げます、アプローチの選択肢を増やす楽しさ
1 別解を見ることで、他の問題にその解法を試す選択肢が生まれます
数学や理科の勉強を進める中で、皆さんは、 「よし、この問題は正解したから、次の問題に進もう」 と、自分の出した答えが合っていただけで満足して、解説の別解や、他のアプローチの方法を読み飛ばしてしまっていませんか。
実は、この「正解したからといって、別解を見ずに終わらせる癖」こそが、皆さんの学力の上昇をストップさせてしまう、本当にもったいない落とし穴なのですよ。
結論からお伝えしますと、数学や物理において、問題の成績を爆発的に伸ばすための最も効果的なアクションは、「別解を、とにかく丁寧に、しゃぶりつくすように見ること」なのです。
例えば、ある幾何の問題を、あなたが「図形の性質」を上手に使って、見事に正解させることができたとします。 もちろん、それだけでも素晴らしいことですが、解説のページに「別解:ベクトルを用いた解法」という項目が載っていたら、そこを絶対に素通りしてはいけません。
「なるほど、この問題は図形的に解くだけでなく、ベクトルを座標空間に設定してあげることでも、こんなにシンプルに解くことができるんだな」 という事実を、別解を通じて学ぶのです。
別解を見ることで、あなたの頭の中には、 「じゃあ、これから先、これと似たような幾何の問題に出会ったときは、図形として解くだけでなく、ベクトルを使って解くという『新しいアプローチの選択肢』も使えるようになるな」 という、未来の可能性が生まれます。
この「自分の中に、試すことができる選択肢(アプローチの手札)をどれだけ多く持っているか」こそが、初見の難問に対抗するための最大の防具になります。 手札が1枚しかなければ、そのアプローチが通用しなかった瞬間に、あなたのペンは止まってしまいます。しかし、別解を見ることで手札が5枚、10枚と増えていれば、 「Aのアプローチがダメだったから、次は別解で学んだBのベクトル法を試してみよう」 「それもダメなら、Cの複素数平面のアプローチを当てはめてみよう」 と、次々に新しい攻撃を仕掛けることができるようになります。この選択肢を増やす楽しさを、日々の勉強の中でぜひ味わってほしいと思います。
2 分からなかったら先生や友達に聞いて、最適なアプローチをみんなで探します
別解を読んだり、自分なりのアプローチを試したりしている中で、 「自分の考えたこの方法でも解けそうな気がするけれど、なぜか途中で計算が合わなくなってしまうな」 「この別解の式の意味が、何度読んでも自分の頭では納得できないぞ」 というように、1人では解決できない深い疑問や、壁にぶつかってしまうことが必ずあります。
そんな時こそ、あなたのプライドを一度リセットして、学校の頼れる先生や、一緒に高め合っている大切な友達に、 「ねえ、この問題をこのアプローチで解こうとしたんだけど、どこで間違えているのかな」 「この別解のこの変形、なんでこれでうまくいくのか教えてくれない?」 と、素直に質問しに行ってください。
周りの人と一緒に、その問題に対する「最適なアプローチ」を、あーだこーだと言いながらディスカッションして探していくこと。
この「みんなで解法を探す対話のプロセス」は、ただ一人で黙々と机に向かっている時間の何倍も、あなたの脳に強烈な刺激を与えてくれます。 友達が「あ、そこはここの角度に注目すれば、一発でベクトルが使えるよ」と教えてくれたその一言は、あなたの脳に鮮明な記憶として残り、二度と忘れない一生の武器になります。 受験は孤独な戦いになりがちですが、勉強のプロセスにおいては、周りの頭脳や先生方の知識を、貪欲に、楽しそうにフル活用していく人こそが、最後に最も効率的に高い学力を身につけて合格を勝ち取ることができるのですよ。
終わりに:才能がないと諦める必要は一切ありません。一歩ずつ進んでいきましょう
今回は、私が宮崎大学医学部に合格するまでの泥臭い受験経験に基づいた、「私が綺麗事なしにお金や楽しさを求めて医師を志した本当の理由」について。 そして、「数学や理科における、地頭の挫折から気づいた解法暗記の本質と、手を動かさずにアプローチを爆発的に増やす竹内流の超効率学習ハック」について、たっぷりと語らせていただきました。
読者の皆さんが今抱いている、「理系の才能が自分にはないのではないかという焦り」や、「周りの優秀な人たちと自分を比べて、自分が取り残されているかのような底知れない不安」は、かつて私が、普通の高校の自習室の蛍光灯の下で、数学の30点の答案用紙を握りしめながら、自分の頭の悪さに涙をこらえていたあの頃と、何一つ変わりません。
しかし、今日お話ししたように、医学部合格への道は、決して一部の生まれ持った天才たちだけに許された、閉ざされた聖域ではありません。 最初は不純なお金への欲望や、ドラマへの憧れといった小さな火種からスタートしても、目の前の教科書の公式を「なぜそうなるのか」という根本から愛して、1つずつ解法パターンを脳内の本棚に並べていけば、誰であっても、確実にその高い壁を突き破り、合格への切符をその手で掴み取ることができるのですよ。
「あの子は地頭が良いから、自分は頭が悪いから」と、自分で自分の限界を決めて、挑戦することを諦めてしまう必要は、本当に、1ミリもありません。 あなたが今、その不器用な自分と向き合い、汗を拭いながら問題集を開こうとしているその泥臭い一歩一歩は、必ずあなたの脳を少しずつ、しかし確実に賢く進化させてくれています。
その地道な努力の積み重ねこそが、将来、病院の救急外来や診察室で、かつての私のように不安で押し潰されそうになっている患者さんの前に立ち、 「大丈夫だよ、心配しなくていいよ」 と、心から優しく声をかけて救ってあげられる、素晴らしい医師になるための、何よりの強固な土台になるのです。
途中で心が折れそうになったり、模試の点数を見て投げ出したくなったりする日も、きっとあると思います。 しかし、あなたが今、その不安を堪えて、もう一歩だけ前に進もうとこの記事を読み、アプローチを増やそうとしているその姿勢は、本当に立派で、何よりも美しい挑戦の姿です。
どうか、自分自身の秘めた無限の可能性と、今日積み上げた地道な一歩を信じて、目の前の課題に、全力で向き合ってください。 あなたがすべての葛藤を乗り越えて、春に笑顔で医学部の門をくぐり、私たちと一緒に素晴らしいキャンパスライフを送れるようになる日を、宮崎の地から心より応援しています。
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